会員インタビュー企画

第1回 日本国際湿地保全連合会長 名執芳博さん

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こんにちは! SPOONは、新しい企画を始動します! SPOONにはたくさんの会員(2020年元日には400名を超えています)がおられます。お一人お一人が、足輪と同じ色やナンバーの指輪をもって、今も空を舞い湿地に休む「あのクロツラヘラサギ」とつながっています。この企画は、そんなSPOONメンバーにはどんな方がいるのか、皆さんにご紹介し、クロツラを愛する人のネットワークの姿を探求するものです。これからたくさんのメンバーの方にインタビューやメールでの自己紹介などお願いしてゆきます。その際は、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、記念すべき第1回目は、名執芳博さん(日本国際湿地保全連合会長)です。SPOON事務局は東工大の学生主体ですが、名執さんは私たちの先輩にあたります!

私たちの身近に湿地があった! 湿地なくして生活なし

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『湿地の文化と技術~東アジア編』(写真右)

​写真左は、日本国際湿地保全連合が2012年に出版した『湿地の文化と技術33選~地域・人々とのかかわり~』

「水田もダム湖も池も湿地なんですよ」。ラムサール条約の言う湿地は自然の湿地だけではない、とまず名執さんが教えてくれました。だから私たちの身近に湿地はあるし、飲み水もお米も湿地の恵みで、そんなことを少し意識できると湿地が身近になるとのこと。本当にそうですよね。特に水田文化から「湿地の恵みと言ってピンとくるのはアジアの人たちという気がしますね」とも仰っていました。名執さんは、現在会長を務めている日本国際湿地保全連合が出版した『湿地と文化と技術~東アジア編』を書くにあたり、タイやベトナムを訪れ、東アジアは湿地と生活がとても近く、湿地と共存する文化が「今も生きている」と感じられたそうです。

ラムサール条約登録52か所!

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北大船山から見た坊ガツル湿原

​手前の花はミヤマキリシマ

​名執芳博さん撮影

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タデ原湿原の風景

奥の山が三俣山で、その尾根を越えた所が坊ガツル湿原

​名執芳博さん撮影

うまく湿地と共存する文化を、ラムサール条約(※1)では「ワイズユース」と呼びます。約50年前、1971年に採択されたラムサール条約では、当初から保全だけでなくワイズユース、すなわち湿地を賢明に利用することを謳っています。湿地は魚、わかめや昆布などを与えてくれるほか、保水し水害時のバッファーになったり、炭素を貯蔵して地球温暖化防止に貢献するなど、様々な恵みを与えてくれます。いわゆる生態系サービスの濃い場所です。条約をつくった人たちはこのサービスを使いこなすことによって、湿地が大切にされるようになることを狙っていたと思うとは、名執さんの指摘です。そして、環境省の職員として、ラムサール条約に登録する湿地を選定していった時期のお話をしてくださいました。先に述べたように、ラムサール条約は多様な湿地を対象にしています。中でも変わったものとして覚えているのが、大分県の「くじゅう坊ガツル・タデ原湿原」で、当時はほぼ草原となり低木も生えている場所で、地元の人も湿地という認識はなかったのだそうです。しかし40年ほど前までは牧草のための定期的な野焼きが「中間湿原(※2)」を維持していたのでした。この歴史を地元の方とも語りあい、そしてラムサール条約に登録され、昔日の草原景観・湿原景観を取り戻すべく、「くじゅうの自然を守る会」の人たちがかつて野焼きをやっていた古老から野焼きのやり方を教わり、美しい草原景観・湿原景観を復活させたのだそうです。

「『湿地はきれいですよ』『こんな貴重な動物や植物がいますよ』ではラムサール条約はこれからやっていけないんじゃないかと思うんです。もっと人の生活に近いところに関係しているんだというところを伝えていかなければならないと今思っています。湿地を守っていけば、自分たちのベーシックな生活が保障されると言うと言いすぎかもしれないけど、そういったところにつながっているんだということをもっとわかりやすく伝えなければいけないと思っています」。日本の52か所のラムサール条約登録湿地をめぐりながら、地域の人たちが大切に湿地と生き物と文化を守っている姿を見るのが、名執さんの楽しみだそうです。

※1 ラムサール条約

正式名称「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」という湿地に関する条約。1971年イラン・ラムサールで採択されたことにちなみラムサール条約と呼ばれている。条約の目的である湿地の「保全(・再生)」と「ワイズユース(賢明な利用)」に加え、これらを促進する「コミュニケーション、能力養成、学習、参加、普及啓発(CEPA)」が条約の基盤。

​参考:環境省ラムサール条約と登録湿地

※2 中間湿原

雨水のみによって植生が維持されている高層湿原と、地下水で涵養され植生が維持されている低層湿原との中間の性質を持つ湿原。EIC環境用語集より
 

名執さんからSPOONへ

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日中韓3カ国環境大臣会合(TEMM)ユースフォーラム​​

2017年、日中韓3カ国環境大臣会合(TEMM)ユースフォーラムにSPOONの所谷が参加しました。名執さんがこのフォーラムのアドバイザーを務めておられたことから、SPOONのメンバーになってくださいました。クロツラを通して国を越えて人々がつながっていくというのはなかなか良い発想だな、ラムサールも国境を越えて人々をつないでいるし、と思われたそうです。ラムサール条約には国境をまたぐ湿地も登録されています。日本の場合はやはり、鳥や稲作文化が湿地のつながりを表すのではとおっしゃっていました。クロツラ日報では、地域の文化の紹介を楽しみにしてくださっているそうです。

最後に、名執さんから「これからもぜひクロツラヘラサギが飛び回る地域のつながり、この渡り鳥を真ん中においた地域づくりを目指して頑張ってほしい」とメッセージをくださいました。応援しているJ10の指輪を持ってきてくださっていた名執さん、長時間のインタビュー、ありがとうございました!

​名執芳博さん(ご略歴)

NPO法人日本国際湿地保全連合会長。東京工業大学社会工学専攻修了後、国立公園のレンジャーに憧れ当時の環境庁に入庁。国連環境計画(UNEP)等を経て、25カ所のラムサール条約登録に携わる。2017年にSPOONメンバーに!ありがとうございます!!

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日本国際湿地保全連合は、環境省が行っているモニタリングサイト1000というプロジェクトなど、日本各地の湿地の状況を把握するための科学的な調査研究と普及啓発を行っています。詳しくはこちらをご覧ください。

公開日:2020年2月20日